ACQUA JOURNAL
AIチャットボットの導入手順|回答範囲・人への引き継ぎ・公開後の確認

AIチャットボットは、設置して返答が出るだけでは運用開始にできません。最初に、答えてよい質問と、担当者へ引き継ぐ質問を分けてください。料金や納期を誤って約束せず、営業時間外にも次の行動を案内できる状態を目指します。
この記事は、自社サイトへの導入を進める企業の担当者と、設置・検収を担う制作会社向けです。導入を決める段階から公開後の確認までを扱います。特定製品の契約や成果をおすすめ・保証するものではありません。
1.自動化する回答と担当者の仕事を分ける
公開情報で答えられる質問から始める
問い合わせの記録から繰り返し聞かれる質問を集め、個人情報を除いて整理します。営業時間、アクセス、公開済みのサービス説明など、正本を指せる質問が出発点です。質問ごとに、回答文、参照するページ、確認した日、更新担当を決めます。根拠となる資料が古ければ、ボットへ登録する前に修正します。
「いつまでに納品できるか」「この条件で契約できるか」のように個別判断が必要な質問は、担当者へ渡します。公開価格がある場合も、適用条件や追加作業が分からないまま総額を約束しないようにします。自動応答をすべての質問へ広げる必要はありません。
回答できないときの案内も用意する
説明用の文例は「この条件は担当者による確認が必要です。お問い合わせ窓口から、希望する内容をお知らせください」です。これは架空の文例で、自社の実際の窓口と返信体制に合わせて直します。担当が不在の時間に、有人対応中と表示しないことも確認してください。

2.回答方式を自社の質問で比べる
選択式のボットは、登録した分岐と回答を表示します。ただし、登録内容自体の誤りや分岐漏れは起こり得ます。「設定どおりに動くこと」と「質問に正しく答えること」は別です。
生成AI型は、文章の質問に対して回答文を生成する方式です。資料を登録しても、誤った回答や条件の省略がなくなるとは限りません。一律の正答率で比較せず、自社で想定する質問を使って確認します。
| 確認する場面 | 試す質問の種類 | 合格の考え方 |
|---|---|---|
| 公開済みの説明 | 正本に答えがある質問と言い換え | 正本と条件が一致し、参照先へ進める |
| 個別判断 | 見積もり・納期・例外の依頼 | 確約せず担当者の窓口へ案内する |
| 回答範囲外 | 資料にない質問や曖昧な質問 | 不明と伝え、必要なら質問を絞る |
| 操作 | 開閉・戻る・窓口への移動 | スマートフォンでも迷わず操作できる |
これは検収用の設計例です。自社の回答方針と合意した判定を記録し、不合格の質問は公開範囲から外すか、回答・案内方法を直して再試験します。

3.費用とデータの条件を契約前にそろえる
初期設定、基本利用料、AI利用分、会話数の上限、追加料金、担当者の確認時間を分けて比較します。セルフホストを選ぶ場合も、サーバー、更新、障害対応、モデルの利用条件を含めて見積もります。「ソフトウェアを利用できること」だけで総費用が無料になるとは判断できません。
製品の一例として、Tidioの公式料金・FAQはCustomer Service、Flows、Lyro AI Agentの購入方法や会話枠を分けて案内しています。比較表の一つの月額だけでは、必要なAI機能や継続利用分まで含まれるか判断できません。見積もり時点のプラン名、課金単位、更新条件を保存してください。
会話に入力された情報の送信先、保存期間、閲覧権限、削除方法も確認します。Tidioのプライバシーポリシーなど、採用する事業者の現行説明と契約資料を照合してください。ここで挙げた確認項目は導入側の確認票であり、特定製品がすべての要件を満たすという評価ではありません。試験には架空の質問を使い、実在の顧客情報を安易に登録しないようにします。

4.検証環境で設置してから公開する
設置方法と変更箇所を残す
Difyの公式埋め込み案内では、公開したWebアプリをチャットのボタンやiframe等で表示する方法が説明されています。アプリを公開する作業と、自社サイトで安全に表示・運用できるかを確認する作業を分けてください。製品側の設定変更が埋め込み先にも反映されるため、Webサイトの編集履歴だけでは変更を追えない場合があります。
WordPressでは、利用中のテーマや既存の設置機能を確認し、担当者と設置場所を決めます。複数のプラグインや共通コードへ重複して登録しないよう、変更前の値と戻し方を保存します。管理用の秘密キーを、閲覧者が取得できるHTMLやJavaScriptへ書き込んではいけません。
回答と画面を一緒に検収する
PC・スマートフォンで、ボタンが問い合わせや同意案内を覆わないか、キーボードで開閉できるか、長い回答を読めるかを確認します。通信できないときにも通常の問い合わせ窓口へ進めるようにします。回答試験の不合格を直した後、同じ質問と関連する質問を再試験してから公開します。
公開日時、対象ページ、変更した設置箇所、アプリ設定、検収結果、復旧担当をまとめます。ボットを外す方法と、サイト側の変更を戻す方法は分けて残してください。

5.会話数と実際の解決を分けて評価する
会話が増えたことだけでは、読者の困りごとや担当者の負担が減ったとは言えません。正しく案内できた質問、不正確な回答、途中で止まった操作、人へ渡した後の対応を分けて確認します。有人への引き継ぎは、必要な相談を正しく渡せた結果かもしれません。転送率を下げること自体を目標にしないでください。
問い合わせボタンのクリック、実際の受付、有効な相談、契約、支援後の解決は別の記録です。導入前後の件数を見るときも、期間、訪問数、広告や営業体制の変更を控え、すべてをボットの効果と決めつけないようにします。
費用の評価には、利用料に加え、回答資料の更新、会話確認、訂正、引き継ぎの時間を含めます。空いた時間を既存顧客の支援や個別相談に使えたか、確認作業を含めても負担が減ったかを記録します。売上をそのまま利益としてROIを計算せず、粗利と追加費用の前提をそろえて判断してください。

6.依頼するときは範囲と完了条件を伝える
まず自社で、対象のサイトURL、答えたい質問、正本となる資料、担当へ渡す条件、現在の問い合わせ窓口をまとめてください。導入そのものよりFAQページの修正で解決できる場合もあります。日常的に更新する担当を決められない場合は、公開範囲を小さくして試す判断もできます。
Acquaへの相談では、Web側の情報整理、導線、WordPressへの設置・修正、表示・操作の検収など、依頼したい工程を共有してください。製品の選定、AI側の設定、外部サービスの契約、会話監視まで含むかは、環境と体制を確認して個別に範囲を決めます。無制限の対応や、回答の完全な正確性を約束するものではありません。
企業はWeb制作・運用の案内、制作会社は実装・保守の受託案内で対応範囲をご確認ください。制作会社からの依頼では、支給される設定、実装箇所、顧客が回答方針を承認する工程も明確にします。
完了条件は、合意した質問に正しく案内でき、範囲外は人へ渡せて、PC・スマートフォンで操作でき、担当が更新と停止を引き継げることです。相談窓口へはサイトURLと困っていることをお送りください。初回からパスワードや顧客の会話記録を送る必要はありません。
